麺専門店における海外の動向と今後の展望

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昨年まで海外訪問は、東南アジア、北米が中心だったのですが、今年は年初から、1月はロンドン・パリ・ドイツ・スイス・ハンガリー、2月は、香港・台中、3月はLA、4月はソウル・シンガポール、5月はロンドン・スイス・ドイツと、最新のレストランビジネスや麺関連ビジネスを見て歩きました。

そして、今後麺ビジネスがどのように進化・変化をしていくのかを見る上で非常に参考になったのがその国の豊かさで、特に訪問国の中でスイスと香港、シンガポールが参考になりました。

最初の訪問国、イギリスのロンドンでは、今まで私がロンドンの食文化に対して持っていたイメージを大きく覆されてしまい、改めて食の世界はどんどん変化していまっした。過去、パリは食文化の情報発信地と言われていましたが、今回訪問してみると、ロンドンの方がはるかに進化し、レベルが高くパリは過去の名声、過去の遺産を食いつぶしているような気がしました。

以上もすべて、現地に行かなければ分からないことであり、今年から当分の間、毎月海外を見て世界の食の進化、麺文化の進化について研究を深めていきたいと思っています。今回の第一回目は、主にヨーロッパについてふれていきます。

イギリス人はアメリカ人と比べると、小柄で日本人に近く気質もアメリカ人よりも日本人に近いものがあり、同じ島国で国王が健在な国であり日本と共通項がたくさんあります。明治中期に第一次日英同盟が結ばれ、その後第二次、第三次と継続していった日本とイギリスとの親密だった関係も、イギリスに来てみると理由がよく分かり、アメリカよりもはるかに日本に近いものを感じます。過去、パリ・ドイツ・イスラエル・NY・LA・他アジアの多くの都市を訪問して来ましたが、今回のロンドンほどの感激はなかったのです。

夜には、テムズ川とタワー・ブリッジ付近の新しく開発されたエリアに行き、最新の健康志向のカフェが集まっている付近に行ってみると、店舗コンセプトが素晴らしく、店内の什器や備品、そして販売されている商品がコンセプトとの一貫性のある素晴らしい内容で、パリとかNYでも見たことのない斬新なものでした。特にテイクアウトのスープの紙容器のデザイン、防水の機能が素晴らしく、ふたをすれば中身がこぼれないような高い精度で作られていました。

ロンドンのテイクアウト紙容器

ロンドンのテイクアウト紙容器

ロンドンのテイクアウトラーメンスープの紙容器

ロンドンのテイクアウトラーメンスープの紙容器

 

その付近にある健康志向のカフェをしらみつぶしに見て、味わった後トラファルガー広場の近くの高級なイタリアン・レストランに案内して貰うと、水曜日の夜とあって、お客さまは多くなかったのですが、今まで訪れた各国のレストランの中でも最も盛り付けが素晴らしいレストランでした。盛り付けの細部にわたるまで、細やかに仕上げられ、味も素晴らしく同行した4人全員が頼んだメニューのレベルが高かったのです。

ロンドンのイタリアンレストラン 盛り付け

ロンドンのイタリアンレストラン 盛り付け

ロンドンのイタリアンレストラン 盛り付け2

ロンドンのイタリアンレストラン 盛り付け

ロンドンのイタリアンレストラン 盛り付け3

ロンドンのイタリアンレストラン 盛り付け

 

過去、ロンドンのレストランのレベルは、食事の不味い場所だと言われてきて、そのような先入観念に駆られていたのでロンドンでは正直、期待していなかっただけにこんなに変化・進化した食文化に驚いたのです。

同行した海外担当の女性スタッフのパベットによれば、彼女が最初にロンドンに留学したのは15年前だったそうですが、その頃のロンドンは今とはぜんぜん異なり、空港、電車、建物、すべてが世界基準と比較すると相当遅れていたそうです。今回来てみてヒースロー空港のターミナルを見ても、昨晩のテムズ川沿いの新しい再開発エリアを見ても、世界で一番くらいに進んでいて建物等のハードも非常に進化していたのです。そして私が一番感心したのは、カフェのハードを支えているソフトでした。現在は、IT産業がたいへんな勢いで、進化を続けていますが飲食ビジネスのソフト部分も負けず劣らずに進化を続けていることが今回のような先進都市を見ると、驚くほど進化していることが分かります。

 

ロンドンのうどん店 KOYA 店内

ロンドンのうどん店 KOYA 店内

ロンドンのうどん店 KOYA メニュー

ロンドンのうどん店 KOYA メニュー

ロンドンのうどん店 KOYA メニュー

ロンドンのうどん店 KOYA メニュー

 

 

SOHO地区のさまざま店舗は、どれもが新しいコンセプトの店で成功するのが当たり前のような刺激的な店舗が多く、現地でご案内戴いた食品卸の会社の社長の話によれば、昔繁盛していた日本食のレストランはほとんど消えて無くなったそうです。NYにしろ、香港にしろ、或いは日本でも昔ながらの日本食の店がまだたくさん生き残っていますが、既にロンドンではそのような店のほとんどは消えてないそうです。

その夜、ディナーでご案内戴いた和食の店「ROKA」は、インド人の投資家と料理の専門家、プロデユーサー、脚本家、食のデザイナー、インテリア・デザイナー、酒の専門家等さまざまな分野の専門家が集まってそれぞれの専門分野のアイデアを凝縮したような店舗でした。普通の日本料理の専門店のような、料理の専門家だけが作った店舗とは、深さも広がりもまったく異なり、裕福なお客さまの高度なニーズを満たしていることが良く分かります。

ロンドンの和食レストラン ROKA

ロンドンの和食レストラン ROKA

ロンドンの和食レストラン ROKA デザート

ロンドンの和食レストラン ROKA デザート

ロンドンの和食レストラン ROKA 刺身

ロンドンの和食レストラン ROKA 刺身

 

まさに、「飲食ビジネス=料理×アート×サイエンス×ユーモア×哲学」を地でいっているような店舗で、提供される一品、一品の料理が芸術作品であり提供タイミングもよく考えられていて、かなり価格の高いレストランでした。夜のディナー時間帯だけでも3回転するような、とにかく空いた席のない素晴らしいレストランでした。

盛り付けも、細部にわたるまで、細やかに仕上げられていましたし、味も素晴らしかったのですがオープン・キッチンの厨房で働いている日本人はまったく見かけず、ほとんどの従業員はニュージーランドとか、オーストラリア人で、ロンドンでは既に、非常に繁盛している和食の店では、日本人スタッフはゼロで、たくさんのレベルの高いお客さまを集めて大成功しているのです。

そして、これは和食の店に限らず、ラーメン店とか、うどん店に関しても同じようなことが起きる可能性があり、もっともっとわれわれ日本人はこのことを世界に出て理解しないといけないのであり、上記の「ROKA」と、姉妹店「ZUMA」は、日本にこそないのですが、NY、香港ほか、世界展開を始めているのです。

ZUMA店内

ZUMA店内

ZUMA 盛り付け

ZUMA 盛り付け

 

ZUMA 盛り付け

ZUMA 盛り付け

従って、これからの日本のうどん蕎麦店、ラーメン店もマネジメント・レベルを海外の強い飲食ビジネスに勝てるくらいに高めていかねばならないことがよく分かります。そうしないと、昔ロンドンで繁盛していた日本食レストランと同じような運命をたどることになりかねません。われわれの日々は未来の遺産作りに他ならず、未来を創ることは、日々の良い習慣の蓄積です。

ロンドンの最新の激戦地区の飲食ビジネスの中で、日本から来ているユーザーさまのラーメン店が大活躍したり、うどん店が大変繁盛していたのには驚き、日本文化を代表する麺料理が、海外で花咲いている様子を見るのは、たいへん嬉しいことであるし、日本人として誇らしいことでもあります。

ロンドン 金田家 様 店舗外観

ロンドン 金田家 様 店舗外観

ロンドン 金田家 様 店舗内

ロンドン 金田家 様 店舗内

ロンドン 金田家 様 商品

ロンドン 金田家 様 商品

 

今回のロンドンの訪問の結果、(これは想定外であったのですが、)ロンドンはNYにも劣らない、世界の食文化の発信源であり、同時にこれからも世界へ向けての食文化の発信源になり得る場所であることもよく分かりました。

食文化が、IT業界等と融合し、ますます複雑化している現在において、ロンドンは旧大英帝国の宗主国であり、未だに、ドバイ・インド・香港・シンガポール・オーストラリア・シンガポール等の世界の有数の国々に、大きい影響を及ぼし続けています。

典型的なIT人種であるアメリカ人やヨーロッパ人、インド人にとってフランス料理やイタリア料理はむしろ馴染の深い料理です。しかし、日本料理はエキゾチックで、まだ知られていないところが多く、奥深い日本文化を併せると、多くの国の人たちを魅了することが出来る料理の世界に残された素晴らしいジャンルではないかと思います。

そのような世界に、日本人が余り気づかずに、その良さに気付いた海外の人たちが熱心に取り組んでいるのは、日本人として勿体ないような気がします。

 

ロンドン 一風堂様 店舗内

ロンドン 一風堂様 店舗内

 

ロンドン 一風堂様 店舗内

ロンドン 一風堂様 店舗内

ロンドン 一風堂様 商品

ロンドン 一風堂様 商品

 

 

ロンドン 一風堂様 商品

ロンドン 一風堂様 商品

 

同じような事例で、「なぜ、“うどん県”からチェーン店が出てこないのか」という論文を書いた香川大学の高木准教授の説によっても、香川県で全国チェーンのうどん店が生まれない一番の理由は、マネジメントの欠乏であるのです。

(http://bizmakoto.jp/makoto/articles/1408/27/news015.html)

世界で活躍する日本の麺料理の猛者が最終的に日本発でなくなるのは、たいへん淋しいことであり、絶対にその様にならないようにするには、われわれはもっと世界の飲食ビジネス全体のことを知らなければいけません。その意味で世界で最も進化している飲食ビジネスをウオッチし続けることは、たいへん意味のあることだと思います。

私は、日本の食の未来を見る羅針盤として、セブン・イレブンの弁当売り場、デパ地下の惣菜売り場を定点観測していますが、世界の食の未来を見る羅針盤の一つが、ロンドンであり、NYであり、パリであることが、今回、ロンドンに来てよく分かり、このような世界の食の大きなトレンドを見ることが出来る、定点観測地点を毎年見続けることをこれからは、国内同様に続けていきたいと思います。

パリでは、オペラ座の近くにある、当社のユーザーさまのうどん店「SANUKIYA」を訪問すると、オペラ座の近くにあるたいへんな繁盛店であり普通の時間に行けば、常に行列なので、10時半に行きご挨拶のあと、スタッフたちと一緒にパリのうどんを堪能しましたが、食べてみて麺の品質では安心しました。

 

ロンドン SANUKIYA様 店舗外観

ロンドン SANUKIYA様 店舗外観

ロンドン SANUKIYA様 店舗内

ロンドン SANUKIYA様 店舗内

ロンドン SANUKIYA様 商品

ロンドン SANUKIYA様 商品

 

その後、オペラ座近くのカフェ等も見て回りましたが、カフェの本場にしては以前と変わり映えがなくロンドンのカフェの方がよほど斬新で、パリでは今まで通りの長い伝統に、あぐらをかいているような様子が見て取れ、それに比べて今までは食の分野では有名でなく、評価の低かったロンドンがこんなに素晴らしい状態に進化していることに驚き、日本の麺文化も進化し続けなければ、明日がないことを理解しなければいけないと思いました。

シュツットガルトで和食レストラン「Tokio Dining」を経営している、アルガイヤー恵子さんの店を初めて訪ねると、店内はデイナーのお客さまで一杯の人気のあるレストランであることが伺え、楽しい夕食を御馳走になりました。かなりお腹も一杯だったので、刺身とすしの盛り合わせと味噌ラーメンを食べてみると、刺身とすしの方はまったく問題がなく美味しく、味噌ラーメンの方は少し課題があったので、修正点をお教えしました。

Tokio Dining

Tokio Dining

 

ドイツの後、スイスへ移動しスイスは国民一人当たりのGDPが世界第四位の裕福な国で、イタリアとも近く、国続きであるので、良いイタリアンの店は、皆スイスに移転するという話がある位、スイスの料理のレベルも高くなっています。

最後は、ハンガリーでハンガリー料理の特徴は肉料理と魚料理で肉料理は豚肉が中心でした。魚料理は海がないので、淡水魚の鯉とナマズが中心で味付けは濃く塩度も高いのが特徴で、味付け自体はなかなか美味しいのですが、量目も半端ではなかったです。われわれ4人は2時から4時までレストランで食事をとりましたが、3人前を注文したのに食べたのは半分以下で、残りはお客さまが持ち帰ったほどで、量目が余りにも多かったので夕食をパスしても丁度良いくらいでした。

食事の間中、ジプシーの生演奏で哀愁を帯びた音楽をずっと演奏し、異国情緒の雰囲気を味わいながらの食事でしたが、途中で、われわれ日本人がいることに気づいたジプシーの一人が、日本の歌の「荒城の月」、「さくらさくら」、「上を向いて歩こう」等を席の近くまで来て、バイオリン演奏をしてくれ、ジプシー独特の哀愁のあるメロデイーで、異国で日本の歌を聞くと、ほろりとしてしまいそうになりました。

ジプシーの生演奏

ジプシーの生演奏

 

 

ヨーロッパでは、北米ほど、日本の麺文化は花開いていないのですが、ロンドンのテイクアウトは、反対に北米以上に進化し、世界で一番進化しているように思います。

今後、ヨーロッパでは、ロンドンが日本の食文化の情報発信源のひとつになるでしょうが、日本人が経営する麺専門店以外に、日本人以外が経営する麺専門店が非常に増えてくることが想定され、過去、寿司が世界中に瞬く間に広まったと同じような現象がすでに起きているのです。

日本の食文化の担い手がすでに日本人から、日本人以外の手に移っていることに、日本の麺専門店関係者は、もっと危機感を持っても良いのではと、思います。

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